胸突坂むなつきざか)” の例文
と小声にぎんじながら、かさを力に、岨路そばみちを登り詰めると、急に折れた胸突坂むなつきざかが、下から来る人を天にいざな風情ふぜいで帽にせまって立っている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
菊坂の空地というのは、胸突坂むなつきざかの下から本妙寺の裏につづいた荒れ地で、子供の遊び場と町内の埃捨場ごみすてばになっている。
井口城の胸突坂むなつきざかを駈け上り、二の丸門も同様な手段で突破し、本丸の中門まで来ると、先にはいっていた腹心の家来が、仮病けびょうとなえていた久作と共に、内から開いた。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
菊坂の空地といふのは、胸突坂むなつきざかの下から本妙寺の裏に續いた荒れ地で、子供の遊び場と町内の埃捨場ごみすてばになつて居る。
「三日前、よく晴れた夕方でしたよ。胸突坂むなつきざかの下で遊んでゐた町内の子供が五人、何度へ潜り込んだか、暫らくの間にき消すやうに見えなくなつたんですつて——」
「三日前、よく晴れた夕方でしたよ。胸突坂むなつきざかの下で遊んでいた町内の子供が五人、どこへ潜り込んだか、しばらくの間に掻き消すように見えなくなったんですって——」