肥桶こやしおけ)” の例文
肥桶こやしおけかついだ男も畠の向を通った。K君はその男の方をも私に指して見せて、あの桶の底にはきっねぎなどの盗んだのが入っている、と笑いながら言った。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
私はただ、苛立いらだたしい心を抱いて立っているよりほかはなかった。と、前の桑畑から、肥桶こやしおけを担いだ一人の百姓男が膝のぬけた股引を穿菅笠すげがさかむってやって来て、家の中に這入ろうとした。
村落のあるところには人家の屋根も白く、土壁は暗く、肥桶こやしおけをかついで麦畠の方へ通う農夫等も寒そうであった。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)