罨法あんぽう)” の例文
そのあとで、机竜之助は、丹前たんぜんを肩から引っかけて、両手をそのえりから出し、小机の前に向って、静かに罨法あんぽうを施しておりますと
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と、博士は平松に手つだわせて、患者の患部へ罨法あんぽうをほどこしながらふりむかれました。
亡霊怪猫屋敷 (新字新仮名) / 橘外男(著)
彼女は身体じゅう罨法あんぽうの繃帯でくるまれて、寝台に寝ていました。出ているのは眼と鼻だけです。じっと天井を見ています。『今晩は、マリヤ・セミョーノヴナ』と言っても黙っています。
女房ども (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
休暇中の魚捕うおとりがたたって、目下気分に動揺を来たしています。ももに太い「くぎ」——つまり腫物はれものができたのです。僕は床にいています。仰向あおむけに寝たきりで、看護婦のおばさんが罨法あんぽうをしてくれます。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
「ばあや、もう眼の罨法あんぽうをする時間じゃなくって」
高原の太陽 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
罨法あんぽうを施しながら、竜之助が答えました。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)