罅隙こげき)” の例文
更に進んで他の心理の罅隙こげきに三角形のくさびを持ち込んで行く心持や、さういふものが沢山に出て来た。
現代と旋廻軸 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
波は遠く寄せて来てこの岩の下に打り当り、湧き返り、深碧の色をして岩の胴腹を破つて突き込んでゐる。日の光が岩の罅隙こげきから洩れて水面へ落ちると、気味悪くギラ/\光つてゐる。
伊良湖の旅 (新字旧仮名) / 吉江喬松(著)
そが罅隙こげきよりしぼりいださるる水は膠のごとく滴り、ここに通へる潮の色はあやしき光を漾はすところ、ただ暗黒のつばさに覆はれたる冥界の消息の幽かに声ならぬ声に伝へらるるあるのみ。
松浦あがた (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)