總有あらゆる)” の例文
貫通車の三等室、東京以北の總有あらゆる國々のなまりを語る人々を、ぎつしりと詰めた中に、二人は相並んで、布袋の樣な腹をした忠太と向合つてゐた。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
不圖渠は、總有あらゆる生徒の目が、諄々くど/\と何やら話を續けてゐる校長を見てゐるのでなく、渠自身に注がれてゐるのに氣が附いた。いつもの事ながら、何となき滿足が渠の情を唆かした。
足跡 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)