素封家ものもち)” の例文
「脇本陣の素封家ものもちの、楢屋佐五衛門の一人娘、お浜という十九の初花に、想われて見りゃア九十郎だって魂フラフラになるだろうよ」
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
大阪市住吉区阿倍野筋一丁目に、山本照美と云う素封家ものもちの未亡人が住んでいた。其家そこには三人の子供があって、長女を政子、長男を政重、次男を政隆と云っていた。
室の中を歩く石 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
田舎の素封家ものもちなどにはよくある事で、何も珍しい事のない単調な家庭では、腹立しくなるまで無理に客を引き留める、客を待遇もてなさうとするよりは、寧ろそれによつて自分らの無聊ぶれうを慰めようとする。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
雍州城ようしゅうじょうの西門から五里ぐらい北の方へ往った。侘しい夕方であった。道度はその日も朝から水以外に何も口にしていないので、物をくれそうな素封家ものもちの家を物色して歩いた。
黄金の枕 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)