粟稈あわがら)” の例文
磚は造做もなく除けてしまった。窓へ手を掛けて押すとなんの抗抵もなく開く。その時がさがさと云う音がしたそうだ。小川君がそっと中を覗いて見ると、粟稈あわがらが一ぱいに散らばっている。
鼠坂 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
あの裂けた紅唐紙の切れのぶら下っている下は、一面の粟稈あわがらだ。その上に長い髪をうねらせて、浅葱色あさぎいろの着物の前が開いて、鼠色によごれた肌着がしわくちゃになって、あいつが仰向けに寝ていやがる。
鼠坂 (新字新仮名) / 森鴎外(著)