粋事いきごと)” の例文
「おまえさん、なにか粋事いきごとですかえ。それだと少し辻番が違うが、まあお話しなさい。なんでも聴きますから」
半七捕物帳:13 弁天娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「あッ、忘れちゃ情けない。——溜屋の主人の粋事いきごと筋、半日がかりでみんな手繰りましたぜ」
当人もまた婦人にしたわれるなんて粋事いきごとは自分のようなものにとうてい有り得べからざる奇蹟きせきと思っていたのだそうだ。ところがその奇蹟が突然天から降って来たので大変驚ろいたんですね
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
全くそんなだったものだから、気丈の方では滅多にひけを取らない私でさえも、一時は可遊さんが誰かに切り殺されたんじゃないかとね、まさかに、斯んな粋事いきごととは思えなかった程なんだよ。
絶景万国博覧会 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
この方はなんと云っても芝居がかりの粋事いきごとです。男も女も借金と云ったところで知れたものですから、わたくしが口を利いて、甲州屋の方は親許身請けと云うことにして、お若のからだを
半七捕物帳:60 青山の仇討 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「なるほど、そいつは粋事いきごとだね。不動前まで行ったら、もっといい茶屋もあるだろうに……」と、半七は笑った。多寡たかが百俵取りで、おまけに道楽者の吉見としては、金廻りが悪いに相違ない。
半七捕物帳:15 鷹のゆくえ (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)