筆蹟)” の例文
「皮を剥いたって、石のつぶては食えそうもないな、——おやおや大層念入りな手紙だ。昨夜お栄から来た手紙と、そっくりの筆蹟だろう」
「なるほど、これはおばばの筆蹟にはちがいないが、そのおばばが、わが身を連れに引っ返さるべく候——と書いているのは、どうした次第か」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どうしてあなたそれがあたしのだとわかって? ああそう、筆蹟でね。では昨晩ゆうべあたしたちが道でつき当たったのは、あなただったのね。ちっとも見えなかったんだもの。
「骨を折ったぜ、親分。お松と、お楽と、お角と、お光と、——これは女の筆蹟だ。次は吉三郎と、総助と、主人の源吉と、——これが男の筆蹟だ」
「骨を折つたぜ、親分。お松と、お樂と、お角と、お光と、——これは女の筆蹟だ。次は吉三郎と、總助と、主人の源吉、——とこれが男の筆蹟だ」
いや大店おほだなしつけはさすがに恐れ入つたものだ、——ところで、大層見事な筆蹟だが、誰が書きなすつたのだえ
「お勢の手拭を調べた時、端っこに書いたたの字がまだ濡れていた。辰蔵は昼頃書いたと言うから夜中まで乾かずにいるはずはない。それに、筆蹟も違っている」
よく書いたと申しますが、この遺書の筆蹟を見ると、一字々々が離れ/″\で、その上字と字の間がゆがみ、一つ/\の字が提灯屋さんのなすり書きぢやありませんか
それにしても、柔か味のある良い筆蹟だな。泥棒などをするより、手習師匠にでもなるといいのに
それにしても、柔か味のある良い筆蹟だな。泥棒などをするより、手習師匠にでもなると宜いのに
「遺書は二た月も三月も前に書いたのかも知れないが、日付を入れたのは、多分昨日だろう。——それはいいが、遺書と日付との筆蹟が違っているのはどういうわけだ」
「よしよし、だんだん目鼻がつくようだ。ところで、この字は誰の筆蹟だえ」
「で、この家で、筆蹟の良いの——字のうまいのは誰と、誰でせう」
「それくらいの事でしたら、——でも筆蹟は良くはありませんよ」
だって、こう言って来てるぜ、——こいつはいつもの手紙と筆蹟は違っているが、言うことは抜き差しのならねえ話だ。〈今夜山脇玄内は海真寺かいしんじ本堂を襲い、本尊弘法大師自刻じこくの坐像を盗み出すはず。
「その文句を書いて貰おうか、お品さんのいい筆蹟で——」
「そいつは敵討の呼出し状と同じ筆蹟じゃありませんか」
「内儀さん、隱さずに皆んな話して下さい。お前さんは、大事な瀬戸際に立つて居るのですよ。殺された納さんの床の下から出た遺書は、誰が見ても、内儀さんの筆蹟だといふが、これは、どういふわけでせう」
たいそう見事な筆蹟だが、誰が書きなすったのだえ
雌雄めすおすも解らないほどの下手へたくそ筆蹟ですよ」
雌雄めすをすも解らない程の下手へたくそ筆蹟ですよ」
「女の筆蹟じゃありませんか、親分」
「この手紙の筆蹟を知つて居るか」
「この筆蹟に覺えはありませんか」
「この筆蹟に覚えはありませんか」
「本人の筆蹟に間違ひは無いよ」
「本人の筆蹟に間違いはないよ」