せば)” の例文
背をかがめ身をせばめでは入ること叶わざるまで口は狭きに、行くては日の光の洩るる隙もなく真黒にして、まことに人の世の声も風も通わざるべきありさま
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
咽をカラアにしめられてしきりに堅睡かたづをのむ猪首ゐくびのすわり可笑しく、胸をシヤツ胴衣チヨツキせばめられてコルセツトを着けたるやうに呼吸苦しく、全体さながら糊されし様に鯱張しやちばりかへつて
燕尾服着初めの記 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
それほど霧で眼界をせばめられていた、それだけまた神経が鋭く尖っていた、自分たちから一間ばかり、先へ離れて、雷鳥がちょこちょこ歩いて行く、こっちで停まれば向うでも停まる
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
人の歩く路をせばめている、もうこの辺からは、雪田が幾筋となく谷へと繋がっている、高頭君の説明するところによると、日本北アルプス中の白馬岳の雪とは、比べものにならないが
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)