空目そらめ)” の例文
「なう/\あれなる御僧ごそうわが殿御かへしてたべ、何処いづくへつれて行く事ぞ、男返してたべなう、いや御僧とは空目そらめかや」の一節。
「歌念仏」を読みて (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
空目そらめをして、何事か胴忘どうわすれした人の様に、「なんだっけなあ、なんだっけなあ、なんだっけなあ」と呟いた。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
もしや自分の空目そらめかと思ったのですが、どうもそうばかりではないらしく、一人の婆が真っ白な姿で路ばたに坐っていたのは本当のように思われてならないのです。
妖婆 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
フアン、ヰンクル夫人の名を聞く度、リツプは相替らず頭を掉り、肩を聳かし、空目そらめを遣ひますが、この身振は彼の自分の運命を諦めたしるしとも、又た圧制を脱れた喜の徴とも取られませう。
新浦島 (新字旧仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
思えば不思議なことよのう。気の弱い侍女どもばかりでなく、衣笠どのの眼にまでも、ありありと見えたとあるからは、臆病者のうろたえた空目そらめとばかりも言われまいよ
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)