眸中ぼうちゅう)” の例文
久しぶりに青天を見て、やれ嬉しやと思うまもなく、目がくらんで物の色さえ定かには眸中ぼうちゅうに写らぬ先に、白きおのがひらりと三尺のくうを切る。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それをいろどる黄葉こうようの濃淡がまたあざやかな陰影の等差を彼の眸中ぼうちゅうに送り込んだ。しかし眼界のひろい空間に対している津田と違って、清子の方は何の見るものもなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)