真鍮色しんちゅういろ)” の例文
午後三時頃と覚える薄日が急にさして、あたりを真鍮色しんちゅういろに明るくさせ、それが二人をどこの山路を踏み行くか判らないような縹緲ひょうびょうとした気持にさせた。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
炉の中にはもはや一本の煙草の吸殻もなく、さらに笑うべきは、三升も入ろうという大きな湯沸しが、何年ものさびを磨き落されていかにも気羞きはずかしげに、真鍮色しんちゅういろの光を放っていたことである。
溜息の部屋 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
心臓を警戒して久しく湯に這入らなかったせいか皮膚が鉛色にドス黒くなって睡眠不足の白眼が真鍮色しんちゅういろに光っている。何となく死相を帯びているモノスゴサは、さながらにお能の幽霊の仮面めんだ。
冥土行進曲 (新字新仮名) / 夢野久作(著)