白樺しらはり)” の例文
枝という枝は南向に生延はえのびて、冬季に吹く風のつよさも思いやられる。白樺しらはりは多く落葉して、高く空に突立ち、細葉の楊樹やなぎうずくまるように低く隠れている。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
よんどころなく、夫婦は白樺しらはりの樹の下をって、美しい葉蔭に休みました。これまで参りましても、夫婦は互に打解けません。源はお隅を見るのが苦痛で、お隅はまた源を見るのが苦痛です。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
馬は最早もう狂気です。牝馬の恋しさに目もくらんで、お隅を乗せていることも忘れて了う。やがて一振、力任せに首を振ったかと思うと、白樺しらはりの幹に繋いであった手綱はポツリと切れる。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)