発心者ほっしんしゃ)” の例文
余儀ない旅の思立から、身をもって僅に逃れて行こうとするような彼は、丁度捨て得るかぎりのものを捨て去って「火焔ほのおの家」を出るというあわれむべき発心者ほっしんしゃにも彼自身をたとえたいのであった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その前にある経机きょうづくえには香炉こうろと、水瓶すいびょうをのせ、やや退がって、阿闍梨性範あじゃりしょうはんの席、左右には、式僧が、七名ずつ、これも、眼たたきもせずに、それへ入ってくる九歳ここのつ発心者ほっしんしゃを、じっと、見つめていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)