物臭ものぐさ)” の例文
それに、物臭ものぐさで、不精で、愚図で、内気で、どういう方面から考えても、泥棒のお先棒などには、まずもっとも不適当な人格キャラクテールである。
犂氏の友情 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
元来みさをは、物臭ものぐさな、だらしのない女で、よくよく汚くなるまで掃除をせずにいるので、掃除といえばいつも普通の家の大掃除のような騒ぎでした。
アパートの殺人 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
その厳粛な意味を、子へ、どう受けとらせるかに、思いを千々とくだいている母の無言なものが、日ごろ物臭ものぐさな高氏をしても、この水垢離をとらせたといえようか。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それも不自由しないだけの金は国許くにもとから送ってくるし時間の束縛の多い職務に極めて物臭ものぐさであった私が選んだ地位だけあって、収入は多くないが至って呑気なものであった。
微笑 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
当人の物臭ものぐさな性質から来ていることが、間もなく明かになったのであった。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
では二三日帰らしていただきます、と云って出かけたが、出がけに応接間へ呼び入れられて、くれぐれも平素の物臭ものぐさな癖を出さないように、病人の体に触れたあとでは消毒を怠ってはならないこと
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)