片羽かたわ)” の例文
父も小さいとき疱瘡をして片目になっているのに、また仲平が同じ片羽かたわになったのを思えば、「偶然」というものも残酷なものだと言うほかない。
安井夫人 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
兎に角片羽かたわになる前の織部正は我武者羅がむしゃらな餓鬼大将のような性質で、こんなにいじけてはいなかったのである。
隣家の子供との間に何等の心的接触も成り立たない。そこでいよいよ本に読みふけって、器にちりの附くように、いろいろの物の名が記憶に残る。そんな風で名を知って物を知らぬ片羽かたわになった。
サフラン (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「わたしはお前を片羽かたわに産んだ覚えはない」
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)