爪楊子つまようじ)” の例文
お隣りのベッドに泰然とあぐらをかいて爪楊子つまようじを使いながら、うむと首肯うなずき、それからタオルで鼻の汗をゆっくりぬぐって
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
爪楊子つまようじのような弱々しい細い歩脚がこれと何らかの意味で釣合って、とにかく生存をつづけている蟹として完成している姿を作るには、ちょっと工夫がりそうだった。
南画を描く話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
もっと確かな証拠は、あなたの襟にさした爪楊子つまようじ。そのひらに、真砂町更科と刷ってある。いけませんね、これじゃアわざわざ日本橋を大まわりして来たかいがない。いわばまるであけすけ。
顎十郎捕物帳:10 野伏大名 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
町人里人の弱そうな者を捜し出してはおどし、女心はこまかく、懐中の金子きんすはもとより、にぎりめし、鼻紙、お守り、火打石、爪楊子つまようじのはてまで一物も余さず奪い、家へ帰って
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)