滲出にじみで)” の例文
まさに死に墜ちる瞬間の、物凄い形相が、画面からぞわぞわと滲出にじみでて、思わずゾッとしたものが、背筋をはしるほどの出来栄えだった。
魔像 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
老人の声はかすかにふるえを帯び、沖を見やっている眼には明かになにか滲出にじみでていた。
麦藁帽子 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
私はジッと見詰めているうちに、握りしめたや脇の下からネトネトとした脂汗が滲出にじみで、眼も頭も眩暈くらみそうな心の動揺に、どうしてもその部屋を抜出さずにはいられなかった。
腐った蜉蝣 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
が、今は陽も既に落ちて、うすら明りの中に、薄墨を流したような、ひだを持った海が、ふっくらとたたえられ、空には早くも滲出にじみでた星が、次第にうるみを拭ってキラキラと輝きはじめていた。
腐った蜉蝣 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)