溺器しびん)” の例文
洗い清められた溺器しびんの肌には、古い陶物やきものの厚ぼったい不器用な味がよく出ていた。愛撫に充ちた貞昌の眼は労わるようにその上を滑った。
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
ちょうど冬のことだったので、宿屋の主人あるじは夜長の心遣いから、溺器しびんを室の片隅に持運んで来た。それは一風変った形をした陶器だったが、物の鑑定めききにたけた貞昌の眼は、それを見遁さなかった。
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)