洋傘ひがさ)” の例文
と澄ました顔で、洋傘ひがさを持って来た柄の方を返して出すと、夫人は手巾を持換えて、そうでない方の手に取ったが……不思議にこの男のは汗ばんでいなかった。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
単衣ひとえの襟をちょいと合わせて、すっとその格子戸へ寄って、横に立って、洋傘ひがさいたが、声を懸けようとしたらしく、斜めにのぞき込んだ顔を赤らめて、黙って俯向うつむいて俯目ふしめになった。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
フト立留まって、この茅家あばらやながめた夫人が、何と思ったか、主税と入違いに小戻りして、洋傘ひがさを袖の下へよこたえると、惜げもなく、髪で、くだんの暖簾を分けて、隣の紺屋の店前みせさきへ顔を入れた。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)