法縄ほうじょう)” の例文
旧字:法繩
「そんな講釈は、おれだって知っているが、いくら法縄ほうじょうをつかむ職業でも、やはり人間は人間だ、泣くなといわれても、泣かずにいられるか、貴様あ」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、うすうすそんな様子も察しているが、わしの役儀は町方与力だ。たとえ、事情や場合はどうあろうと、あくまで、法縄ほうじょうは公明に十手は正大にうごかなければならん」
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
法縄ほうじょうは公明に! 十手は正大に! およそ社会の清浄と幸福のために、征悪の兵士となって働く捕手は、いかなる場合にも、いかなる相手にも、それが悪である以上は、断じて
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
面目ない! わしは恥かしい! 法縄ほうじょうを司る公人として三十年、江戸与力の先輩といわれ、めでたく、公職をまっとうして、去年の秋、名月の夜には、その隠退祝いをかねて、世間の人々から
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、城市のまん中にあるいかめしい官衙かんがには、泣く子もだまるという怖ろしいお奉行が住んでいた。外は他国の諜報ちょうほう策動に、内は市民の道義と起居に、いやしくも法縄ほうじょうを飾り物にはしていない。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どうじゃな武蔵、同じ捕まるものならばわしの法縄ほうじょうに縛られぬか、国主のおきても法だし、仏のいましめも法だが、同じ法は法でも、わしの縛る法の縄目のほうがまだまだ人間らしい扱いをするぞよ」
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)