沛雨はいう)” の例文
けれど、徐々に、片手に剣をさげた武蔵の姿が、沛雨はいうをつつんだ一黒雲こくうんのように、敵のしんへ、やがて降りかかるものを、恐怖させていたことはたしかである。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
四月に入ると、何か人の心が、がたっと滅入めいり落ちたように、城内はひっそりしてしまった。城下の侍町を見わたしても、沛雨はいうの後のような淋しいものが、昼間でも漂っていた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)