気不味きまづ)” の例文
旧字:氣不味
突然な斯の来客の底意の程も図りかね、相対さしむかひすわる前から、もう何となく気不味きまづかつた。丑松はすこしも油断することが出来なかつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
僕はたゞ双方の顔いろでそれが何か行き違つた、気不味きまづい話だとはすぐに察した。ことに陶の平常に似合はず神経質なのは目立つた。張政府の没落ももう時日の問題なのだから。
南京六月祭 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
代助は少しでも気不味きまづい様子を見せて、此上にも、女のやさしい血潮をうごかすに堪えなかつた。同時に、わざとむかふの意を迎へる様な言葉をけて、相手を殊更に気の毒がらせる結果を避けた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
この気不味きまづさを救つたのは、病身の娘であつた。娘が不意に気分が悪いと言ひ出したので、ジッド夫人は客室の長椅子に寝かせたのである。病人を扱ふ事は、ジッド夫人の数十年来の家事であつた。
亜剌比亜人エルアフイ (新字旧仮名) / 犬養健(著)