武田四郎勝頼たけだしろうかつより——、すなわち、伊那丸いなまるの父なる大将は去年天正十年三月、織田おだ徳川とくがわの連合軍にほろぼされて、天目山てんもくざんふもとではなばなしい討死うちじにをとげていること、天下の有名
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
き君とのみ思うていた、武田四郎勝頼たけだしろうかつよりその人のかわれる姿すがたはいすことができるのかと、龍太郎も忍剣も、思わずむねをわななかせて、大地にひざまずき、伊那丸もまだその姿すがたはいさぬうちから
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)