すす)” の例文
お美代は到頭、両手でうた顔を、お婆さんの布団の端に伏せた。やがてすすきは、声にまでなって来た。
蜜柑 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
橘は父にほとんど抱かれるように顔をよせ、ふたたび、それと分らぬ程度にすすり泣いた。基経は娘を寸時も一人にして置くことの危険とそれをふせぐために手元から離してはならぬと思った。
姫たちばな (新字新仮名) / 室生犀星(著)
そのまんまるさは次第に大きくはなったが、しかし輪廓をぼやけさせてゆがんで、それを持ちこらえられなくなって、いきなり飛びついて悲しげに甲斐絹のようなよわい長い声ですすり泣いた。
みずうみ (新字新仮名) / 室生犀星(著)