欲得よくとく)” の例文
さも慨然がいぜんと腕を組んだ富五郎のまえに、おさよは始めて欲得よくとくのない母の純心を拾い戻した気がして、ながらく忘れていたいとおしい涙が、お艶に対してこみあげるのを覚えた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
何にいたせおせっかいといえばいえなくもござりませぬがそれがみんな欲得よくとくをすてた姉おもいから出ていることがわかってみればお遊さんも父もありがたなみだにくれるよりほかはござりませなんだ。
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)