横文おうぶん)” の例文
当時横文おうぶん読むのわざはきわめてむつかしきことにして、容易に出来難き学問なりしがゆえに、これを勤めたることならん。
伊藤公の書いた七絶しちぜつ半折はんせつを掛けた床の間の前に、革包かばんが開けてあって、そのそばに仮綴の inoctavoアノクタヴォ 版の洋書が二三冊、それから大版の横文おうぶん雑誌が一冊出して開いてある。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ここにて考うれば、筆算に便利あるが如くなれども、数の文字、十字だけは、横文おうぶんを知らずしてかなわぬことなれば、今の学校にて教育を受けたるものよりほかには通用すべからず。
小学教育の事 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
多くの障碍しょうがいしのいで横文おうぶんの書を読もうとする程の気力がなかったのとのめに、昔読み馴れた書でない洋書を読むことを、翁は面倒がって、とうとう翻訳書ばかり見るようになったのである。
カズイスチカ (新字新仮名) / 森鴎外(著)