松風しょうふう)” の例文
そう仰っしゃらずにといいながらもいては争わず、もうそのことは忘れたように、江月こうげつ照ラシ松風しょうふう吹ク、永夜えいや清宵せいしょう何ノ所為しょいゾと悠々ゆうゆうたる調子で吟じた。
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
薄倖多病の才人が都門の栄華をよそにして海辺かいへん茅屋ぼうおく松風しょうふうを聴くという仮設的哀愁の生活をば、いかにも稚気ちきを帯びた調子でかつ厭味いやみらしく飾って書いてある。
夏の町 (新字新仮名) / 永井荷風(著)