曳舟ひきぶね)” の例文
河心の一銭蒸汽じょうきは、曳舟ひきぶね蒸汽を追い越して、河岸の石垣に、あと浪を寄せつけて行きます。幼馴染の景色は何一つ変ってません。何一つ変っていません。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ぬしなきモーターボートは、漁船の船尾につながれた。それを曳舟ひきぶねにして、元来た方角へフルスピードだ。警察署長を初め誰も名案はないのだから、明智の提議は無言の内に採用せられた。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そうかい、おまえさん、橋を渡って河岸かしを歩いて帰りなさるかい。今日は天気が宜いから曳舟ひきぶねから岸壁の環へ洗濯ひもを一ぱい張ってあるから歩きにくいよ。は は は。
百喩経 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)