抜足差足ぬきあしさしあし)” の例文
旧字:拔足差足
そこで、抜足差足ぬきあしさしあし、ソロリソロリと格子戸を開けて、玄関の障子を開けて、靴を脱ぐのも音のせぬ様に注意しながら、いきなり茶の間の前まで忍び込んだ。
接吻 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
小野 (その声にはっとして耳を澄まし、何やら烈しい恐怖感に襲われ、文麻呂が眼をつむっているすきに、抜足差足ぬきあしさしあしで左方にこそこそ逃げて行こうとする)
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
直行はたたずみて様子をうかがひゐたり。抜足差足ぬきあしさしあし忍びきたれる妻は、後より小声に呼びて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
往来の人達は、何かえたいの知れぬ不幸を予感しているとでもいった風に、抜足差足ぬきあしさしあしで歩いているかと見えた。音というものが無かった。死んだ様な静寂が、其辺そのへん一帯を覆っていた。
恐ろしき錯誤 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)