憔忰しょうすい)” の例文
数日、陽の目を見ず、ここに坐ったきりなので、色はよけいに白く見え、心もち憔忰しょうすいして、日頃の美貌が、よけい凄愴せいそうえて見えた。
夏虫行燈 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何度も会っているうちに、B教授のどことなくひどく憂鬱ゆううつ憔忰しょうすいした様子がいっそうはっきり目につきだした。
B教授の死 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
帰ることは知っていたとみえて、松尾はそれほど驚かなかったが、玄一郎のほうで、妻があまり憔忰しょうすいしているのにびっくりした。顔色も悪いし頬のあたりがこけて、充血した眼がおちくぼんでいた。
いさましい話 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
遂に、って御威光を以て、お目通りしましたところ、きゅうなどすえておられ、御顔色も憔忰しょうすいの態に見うけられましたが、一日食わず、一夜眠らず、灸などすえれば、病態は作られまする。
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)