“憐愍(あわれ)” の例文
欣弥はこの体(てい)を見るより、すずろ憐愍(あわれ)を催して、胸も張り裂くばかりなりき。同時に渠はおのれの職務に心着きぬ。私をもって公に代えがたしと、渠は拳(こぶし)を握りて眼(まなこ)を閉じぬ。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
雷はます/\劇(はげ)しく鳴った。最早(もう)今度(こんど)は落ちた、と彼は毎々(たびたび)観念した。而して彼の心は却て落ついた。彼の心は一種自己に対し、妻に対し、一切の生類(しょうるい)に対する憐愍(あわれ)に満された。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎、徳冨蘆花(著)