慾望のぞみ)” の例文
斯う考へると、切ない慾望のぞみは胸をいて春の潮のやうに湧き上る。穢多としての悲しい絶望、愛といふ楽しい思想かんがへ、そんなこんなが一緒に交つて、若い生命いのち一層ひとしほ美しくして見せた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
判斷が消えてしまつた。目の前の女は乃ち女である。何等の社會的關係もない。束縛もない。目の前の女は唯だ單に、私が慾望のぞみの對照物として忽然現れ出たものとしか見えなくなつた。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)