惨酷むご)” の例文
旧字:慘酷
窓の外には、見送の切符を握った正太が立って、何もかも惨酷むごいほど身にしみるという様子をしていた。車掌は飛んで来て相図の笛を鳴らした。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それに連れて眼の前に惨酷むごたらしい『狂人焚殺ふんさつ』の絵額や、ニコニコしている斎藤博士の肖像や、蒼白い、真面目な若林博士や、緑色に光る大卓子テーブル
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
何かわたしがお殿様へ、毒なものでも差し上げるような、その惨酷むごい仰せられよう。あんまりでござんすあんまりでござんす。……それほど疑がわしく覚し召さば一層お暇を
赤格子九郎右衛門の娘 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
惨酷むごたらしく変化したマリイ夫人の絞殺屍体を一目見ると、そのまま一散に表へ飛出して、意気地なくも、内海の波打際にブッ倒れて気絶しているのを
S岬西洋婦人絞殺事件 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
人形歌舞伎の殺し場よりもっと惨酷むごい嬲り殺し。
村井長庵記名の傘 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その寺で惨酷むごい殺され方を致しました男だか、女だかが死に際にコンナ事を申しましたんだそうで……この怨みがドンナに深いか、お庭のくれないの花を見て思い知れ。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
顔から胸が惨酷むごたらしい鼻血と泥にまみれて、両手と、ズボンの破れから露出した膝小僧の皮が痛々しく擦り破れていたが、それでも店頭の蝋人形ソックリの青い大きな瞳を一パイに見開いて
戦場 (新字新仮名) / 夢野久作(著)