御物おもの)” の例文
殿の御物おものはますます増長し、小枕こまくらほどになったことで、あおのけに寝た腹の上に、ふぐりが大々と盛りあがり、石灯籠の子持笠のように見えた。
玉取物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
そのほか振袖ふりそでのわかい腰元三人、それから中居なかい、茶の間、御物おもの縫いの女、それから下働きのおさんどん二人、お小姓二人、小坊主こぼうず一人、あんま取の座頭一人、御酒の相手に歌うたいの伝右衛門でんえもん
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
この上は、おのれら二人の力で、日毎に肥えまさる悪性の御物おものと駆けくらべをするほかはないと決意したことであった。
玉取物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
殿が御物おものにたいする辞宜じぎもさることながら、この儘に捨て置いては、鉄丸てつがんの重さに引かれ、明日にも地獄の底へ落入られるやのあやうい境界に立到った事故
玉取物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)