彼女あのひと)” の例文
なるほど、お前は妖術の力で魂を呼び出して彼女あのひとを苦しめるけれど、神様だけが彼女あのひと御意みこころのままになし給ふことが出来るのです。
彼女あのひとは部屋に一人で眠ってはおられません、そして彼女あのひとのそばには砦のなかの者は一人もついておりません」
(新字新仮名) / フィオナ・マクラウド(著)
「そうよ。彼女あのひとの話は陰影がトテモ深いんですから、用心して聞かなくちゃ駄目よ。たといソンナ事をハッキリ仰言ったにしても、それあ嘘よ……キット……」
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「何か変ったことがあったようでございますよ、牧師さま。見てあげたいと思っても、彼女あのひとは大変気が荒くなっているものですから、誰もよう入れないので……だが貴方なら大丈夫です」
老嬢と猫 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
「三十二やそこらで後家になるなんて彼女あのひともお気の毒や、あの器量やからはたで捨てちゃおくまいが、何かあれば尻軽や云われようし、いつまでここにおれば財産が欲しいのや云われようしな」
正体 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
僕が、彼女あのひとを苦しめるものだから——だが、僕は堪らないのです。
(旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
すつかり忘れてしまへるものなら、あたし、どんなものだつて吝みはしませんわ。可哀さうなカテリーナ! 彼女あのひとは自分の魂が知つてをることの半分も知らないんだもの。
結局、わたし達はもう、世間のひとのようにはなれないということを悟りましたので、赤ん坊を両女ふたり所有ものにして育ててゆこうと相談しました。それで、あの子は彼女あのひととわたしの共同の子供なのです。
二人の母親 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
「誰って彼女あのひと以外に誰も居なかったじゃないの……」
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
でも妾はそのことで彼女あのひとを咎めだてする気は更々ありません、——どうか後生安楽に成仏して貰ひ度いもんだ——彼女あのひとは始終、この妾に不実な仕打ばかりしたものだけれど、しかし
ところが亡くなつたお前さんのお母さんといふひとは、まあ此処だけの話だけれど、とても変人でね。悪魔に(神様、どうぞこの穢らはしい言葉をお赦し下さい!)だつて彼女あのひとの気心は分りやしない。