弾条ぜんまい)” の例文
弾条ぜんまいで使用する落し金というのは、元来、打附木材住宅ハーフ・チムバア(漆喰壁の上に規則的な木配りで荒削りの木材を打ち附ける英国十八世紀初頭の建築様式)
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
弾条ぜんまいのきしむ音と共に時計が鳴り出した。クララは数を数えないでも丁度夜半よなかである事を知っていた。そして涙を拭いもあえず、静かに床からすべり出た。打合せておいた時刻が来たのだ。
クララの出家 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
そうしているうちに、ジジイッと、機械部の弾条ぜんまい物懶ものうげな音を立てると同時に、塔上の童子人形が右手を振り上げた。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
が、その時、中央の大きな象嵌ぞうがん柱身の上に置かれた人形時計が、突然弾条ぜんまいゆるむ音を響かせたかと思うと、古風なミニュエットを奏ではじめたのであった。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
前夜の睡眠中に捲かれておいた弾条ぜんまいが、毎朝一分も違わぬ時刻に——目醒めると動き出して、何時には、貫木たるきの下から仏間の入口にかけて二回往復し、それから四分ほど過ぎると
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)