弄花はな)” の例文
奥では弄花はなが始まったのか、小母さんの、いつものヒステリー声がビンビン天井をつき抜けて行く。松田さんは沈黙ったまま米をぎ出した。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
神田で雑誌を出している友人の元へ、弄花はなに往くと云う細君とれ立って家を出て、二三日横浜あたりを遊び歩いて帰った日の細君の倒錯的な癖を彼は思いだした。
文妖伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
学校からみんなが帰って来ると、弄花はなの仲間も殖えて来た。二男の糺も連中に加わって、出の勝つ母親のだらしのない引き方を尻目にかけながら、こわらしい顔をしていた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
十時頃、山の学校から帰って来ると、お養父さんが、弄花はなをしに行ってまだ帰らないのだと母は心配していた。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
するうちに、奥の暗い部屋でしで弄花はなが始まった。主婦は小肥りに肥った体に、繻子しゅすの半衿のかかった軟かいあわせを着て、年にしては派手な風通ふうつう前垂まえだれなどをかけていた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)