巴御前ともえごぜん)” の例文
小野小町か巴御前ともえごぜんでも再来しないかぎり、とうてい困難のようでございますが、まてば海路のひより——いや、捕物怪奇談でございますから
「そんなんじゃないのよ。」さちよは、暗闇の中で、とてもやさしく微笑ほほえんだ。「あたし、巴御前ともえごぜんじゃない。薙刀なぎなたもって奮戦するなんて、いやなこった。」
火の鳥 (新字新仮名) / 太宰治(著)
巴御前ともえごぜんを描いたまだ新しい絵凧が一枚、空中から舞い落ちて、糸は高く桜のこずえに、凧は低く木蓮もくれんの枝にひっからまって、それをはずそうと、垣の外でグイグイ引くのがわかります。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
おいちゃいちゃの巴御前ともえごぜん、兄が留守したとても、あんまり京弥とおいちゃいちゃをしてはいかんぞよ。兄はすばらしい恋の鞘当さやあて買うてのう。久方ぶりで眉間傷が大啼きしそうゆえ上機嫌じゃ。
「福兄さんが朝比奈をやって下されば、巴御前ともえごぜんはわたしのものでしょう」
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)