岩窟いわあな)” の例文
だが——岩窟いわあなの中の耀蔵は、たおれなかった。一発は彼の脚をかすめ、一発は、岩窟の肌にぷすッと通った。——そしてあとの一発は、不発だった。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しばらく行くと眼の前に岩窟いわあなの口があらわれた。すかして見ると窟内くつない焚火たきびがトロトロと燃えている。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
辛くも、たどりついた一さい——宕渠寨とうきょさいのうちへ味方を収めると、彼は、きびしく岩窟いわあなの門をふさぎ、渓谷の柵門を固め、また絶壁の堅城にふかく隠れて
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どこぞに岩窟いわあなでもあるとよいに」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
前々から聞いていたことだが、錦屏山きんびょうざん岩窟いわあなにひとりの道士がいるそうな。紫虚上人しきょしょうにんといわれ、よく占卜せんぼくを修め、吉凶禍福の未来を問うに、掌をさすようによくあたるという。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は、岩窟いわあなの外の光線によって、毎朝、岩壁へ爪の先で深く一筋ずつしるしを彫っていた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
無論、岩窟いわあなの中には、何ら口に入れるような物はない。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)