尿瓶しびん)” の例文
「イヤ。尿瓶しびんぐらいの事なら、自分で都合が出来るんですが……エエ。その何です。チョットお伺いしたいことがあるんです」
一足お先に (新字新仮名) / 夢野久作(著)
爺さんは階下にわざわざ下りて行くのが大変なので、蒲団の裾の方に尿瓶しびんが置いてあるが、そこで小便をした。
日本三文オペラ (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
窓のそばに桃花心木マホガニの書机がひとつ、椅子がひとつ、床の上には古新聞や尿瓶しびんや缶詰の空缶や金盥……その他、雑多なものが、足の踏みばもないほど、でまかせに投げちらされている。
金狼 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
日本人は寝屋の内に尿瓶しびんを置きてこれに小便をたくわえ、あるいは便所より出でて手を洗うことなく、洋人は夜中といえども起きて便所に行き、なんら事故あるも必ず手を洗うの風ならば
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そろそろ空腹であるが、女中二人と、娘一人っきり(読売新聞の結婚談は大譃である)、神経痛で、腰が痛むから、尿瓶しびんを置いて、用を足す位で、勝手へ行って、パンを焼く気にもなれない。
死までを語る (新字新仮名) / 直木三十五(著)