尺牘せきとく)” の例文
伊緒はすぐにもどって来た、そして父がかたみに遺していって呉れた尺牘せきとくをひろげて、これを読んでごらんなさいと郁之助の手へわたした。
日本婦道記:春三たび (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
右の尺牘せきとくは大沼芳樹女史の所蔵に係るもので、尺牘には行間の余白を縫って後から書添えた文言がなお一カ条ある。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
大垣おおがき藩の侍医をしていた細香の家と菅野家とは交際があったらしく、細香の父蘭斎らんさい尺牘せきとくなども残っていることなどが話題になって、未亡人と沢崎との間に暫くその方面の閑談が弾み
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
愚堂の墨跡ぼくせき尺牘せきとく、反古の文字までが数多残されているということであり、わけてG氏は、自身大愚と愚堂の遺作も蒐集され、寺祖の研究に、その方面からも長年心を傾けて来た人なのである。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
殊に尺牘せきとくの如きは、まことにたまらないまでのものである。
良寛の書 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
当時五山の詩話中にその作を採録せられることは非常なる名誉であったと思われる。松隠は兄竹渓から送られた手簡と『五山堂詩話』とを受取り、これに答るに次の如き漢文の尺牘せきとくを以てした。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「このこころ忘るべからず」としるした尺牘せきとくをのこしていって呉れた。
日本婦道記:春三たび (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
一秀吉の尺牘せきとくで秀吉は窺われるのである。