小心しょうしん)” の例文
しかし室の内部からしんばりをかったりして真昼まひる女給たちから小心しょうしんわらわれたものだ。その夜、お千代は当番で、最後まで店にのこっていたものらしい。
電気看板の神経 (新字新仮名) / 海野十三(著)
いつ死んでもいいという最後の度胸はすわっていたが、平常の家康はお人好しで、小心しょうしんな男であった。
家康 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
夏は放胆ほうたんの季節だ。小心しょうしん怯胆きょうたん屑々乎せつせつこたる小人の彼は、身をめぐる自然の豪快を仮って、わずかに自家の気焔を吐くことが出来る。排外的に立籠めた戸障子を思いきり取り払う。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
K中尉は小心しょうしんものだけに人一倍彼に同情し、K中尉自身の飲まない麦酒ビールを何杯もいずにはいられなかった。が、同時にまた相手の酔うことを心配しずにもいられなかった。
三つの窓 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)