宇乃うの)” の例文
こう云って、慶月院は、宇乃うのさん、と呼んだ。静かであるがよく徹る声で、返辞が聞え、まもなく、茶の間に通ずるふすまをあけて、宇乃が顔をみせた。
帯刀たてわきは話しをやめて、じっと宇乃うのの横顔を見まもった。彼は原田家の嗣子で、年は十七歳になる。父の甲斐には似ていない、おそらく母親似なのであろう。
畑は納戸なんど役(禄高不明)で夫婦の間に宇乃うのという十三歳の娘と、虎之助という六歳の男子があった。訪問者と聞いたとき、畑はふと不吉な予感におそわれた。
水を満たした手桶ておけを脇に置き、手拭を持って、宇乃うのは立ったまま、慶月院が薙力なぎなたを振るのを眺めていた。
丹三郎がさきに知らせたからだろう、宇乃うのも虎之助も、着替えをして待っていた。虎之助は夜具の上に坐り、小さな膝をきちんとそろえて、姉といっしょに挨拶をした。
その朝、——宇乃うのは丹三郎に呼ばれて、これから良源院へゆくのだ、ということを聞かされた。
居間には行燈がついていて、その脇のところで宇乃うのが、甲斐の着替えをそろえていた。
宇乃うのをたのむと書いて、甲斐は筆を置き、読み返してから、それを巻いて封じた。
芝の良源院の方丈で、住職の玄察が宇乃うのと話していた。宇乃は三日まえに来た。
「江戸から宇乃うのと申す少女がまいりました」