好色すき)” の例文
帰って来てから、道綱が私にその事を話して聞かせたが、私は「まあ、いくらお好色すきな方だって、こんな撫子を御覧になったら——」
ほととぎす (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
こぼるゝ幾筋の雪はづかしき頬にかゝれるほど、好色すきたる人に評させんは惜しゝ、何とやら觀音さまの面かげに似て、それよりは淋しく、それよりは美くし
暗夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
近ごろは、いわぬにかずときめていた。かの女がちょうど今の瑠璃子ぐらいな年ごろに、上皇のお好色すきを知って、祇園女御ぎおんのにょごを取りもったのは、自分である。
好色すきからとばかりなら、みょうだいを買った気で、一晩ぐらい我慢もしようが、俺のは宗旨だ、宗旨だよ。宗門がえをしろと言って誰がくやつがあるものか。
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)