外套とんび)” の例文
じゃ、古い外套とんびだが、あれでも置いとこう、と、私が座敷に戻って来ると、神経質のお宮は、もう感付いたか、ちょいと顔を青くして、心配そうに
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
堀田は甲斐甲斐しく、外套とんびを脱いで、それを兵野に羽織らせると、着物の裾を端折つた。昼間は、うら/\として好天気続きで、すつかり春めいた陽気であつたから兵野は外套を着てゐなかつた。
露路の友 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
其処そこら火灯あかりで、夜眼にも、今宵は、紅をさした脣をだらしなく開けて、此方をあおのくようにして笑っているのが分る、私は外套とんびの胸を、女の胸に押付けるようにして
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
あの古い外套とんびかたに置いて、桜木の入口を出たが、それでも、其れも着ていれば目に立たぬが、下には、あの、もう袖口も何処も切れた、剥げちょろけの古い米沢よねざわ琉球の羽織に、着物は例の
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)