夕飯後ゆうめしご)” の例文
夕飯後ゆうめしご、ランプがついて戸がしまると、深い深い地のそこにでも落ちた様で、川音がます/\耳について寂しい。宿からはぎの餅を一盂ひとはちくれた。今宵こよい中秋ちゅうしゅう十五夜であった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
新吉は女から一けんばかり離れて夕飯後ゆうめしごの腹こなしに公園を一廻ひとまわりしている人のようなふうをして歩いた。七八人の人の群がむこうから来たので女の姿はちょとその陰になった。
女の首 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
食堂へ入る前の彼女はいまだかつて夫の事を念頭においていなかったので、お延に云わせると、こういう不可抗な心の作用は、すべて夕飯後ゆうめしごに起った新らしい経験にほかならなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)