壱岐坂いきざか)” の例文
同じ年の十月頃、僕は本郷壱岐坂いきざかにあった、独逸ドイツ語を教える私立学校にはいった。これはお父様が僕に鉱山学をさせようと思っていたからである。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
私たちはそれから壱岐坂いきざかへおりる路と平行した右側の焼け残った路を往って、順天堂のあたりから水道橋の手前まで一撫でにした火の跡を見て引き返した。
死体の匂い (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
以前と違って笠をかぶらないで、「伝通院学寮」の提灯ちょうちんを腰にはさみ、例の杖槍はてばなすことなく、門を出て本郷の壱岐坂いきざか方面へ、跛足びっこを引いて歩んで行きます。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
十時ごろ帰って来て、飯田橋いいだばしで一度電車を乗り換え、二度目に水道橋で大塚行の電車へ乗って、後の上り口の処へ立っていると、春日町かすがちょうの方から来た電車と壱岐坂いきざか下の手前で擦れ違った。
妖影 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
壱岐坂いきざか時代の修行が大いに用立つ。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)