囚虜とりこ)” の例文
妻のウルリーケを見ればうなずかれるが、事実にも衡吉は、不覚なことに老いを忘れ、あの厭わしい情念の囚虜とりことなっているのだった。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
月代毛さかやきも延びた。顔色も蒼白く成った。眼の窪んだのが自分ながら驚かれるので有った。正しく妖魔の囚虜とりこと成ったので有った。
死剣と生縄 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
そして、静かに顔をめぐらして、岩城いわしろの明かりを、もの欲しげに見やるのだったが、その時、軍船の舵機だきが物のみごとに破壊された。新しい囚虜とりこを得た、歓呼の鯨波ときが、ドッといっせいに挙がる。
紅毛傾城 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)